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乗西寺 寺報

2013年秋 第50号
つなぐ

小さなもの、大きいこと

10月2日、名古屋の最高気温が2日連続で30度を越える真夏日となった。
今年の真夏日の日数は計86日となり、80年ぶりの一位タイの記録という。温暖化というより、ここは亜熱帯になったのか?と思ってしまう。
夏の終わりの感傷的な気分を味わうことなく、日々が過ぎて行く。

同じ2日夜、安部首相は伊勢神宮での「式年遷宮」に参列した。
現職首相の出席は戦前1929年の浜口雄幸氏以来84年ぶり。この安部政権は「集団的自衛権の行使」を可能にするという自衛隊を他国に派遣して、
戦うことができるように憲法解釈の変更に向かって議論を進めている。
「国を愛し、国を守るため」と言いながら、どこに向かっていくのだろうか。
美辞麗句の裏には恐ろしい牙が隠されている。私たちは注意深く見ていかなければなりません。
では、そういうあなた自身はどうするのかと問われたら……

91歳の哲学者鶴見俊輔さんは『流れに抗して』で

現政府の決定をとにかく受け入れなくてはならない、そういう考えじゃないのです。
むしろ現政府の決定を押しとどめる、それとわたりあう力を、この国の伝統の中から探したい


と語っている。私も「この国の伝統の中から、わたりあう力を探し」持ちたいと思いながら、
それはそう生きた人間、人を見出すことではないかと……有名な人でなく、ふつうの市井の人を探しあてることができれば素敵だなぁ。

実は鶴見さんが現政府といっているのは、中曽根康弘首相時代のことなのですが、
当時中曽根首相は「日本は不沈空母で、日米は運命共同体」と言っておられた。
いまの安部首相が似ているというか、安部首相が中曽根首相をまねているというよりも圧倒的多数の自民党政権時代に戻ろうとしているのだろう。

そういう人と対する時に「アメリカはこうだ」(アメリカはあやしいのだけれども)、「ヨ-ロッパではこうだ」とか、そんなことを言わずにこの国の伝統というか、それも「安藤昌益は偉かった」というような調子ではなく探りたい

人の発見

では、具体的にどんな人物を鶴見さんはあげられているのか。
先ず京都のパン屋進々堂の続木満那さん。彼は年輩になってから軍隊に召集されて、一週間後には新兵として中国戦線に送られた。 そこではすぐに

新兵に活を入れるために、明日は銃剣で捕虜を突き殺すことをさせるという予告があった。
中国人のスパイをね。 ……それは2月だったのだそうですが、雪の中の林の木にくくりつけられていた。
それを新兵が銃剣で突き刺す。「突け-っ!」といわれると、「ヤ-ッ」と突くのだそうですね。


前の晩とても苦しんだ彼は、逃亡するかどうか考え続けた。

結局、明け方に達した結論は、その場には出る、だけど殺さないという決断だった。
中隊長の命令が下った時に、彼は銃を持ったままで、「お前なんだ!」と何度も言われても動かないから、
今度は自分の銃を中隊長に取られて銃の台尻で殴られた。兵営に帰ってから、「お前は犬にも劣る奴だ」って。

雪の降る兵営の庭で、彼は軍靴をくわえさせられてよつんばいになり、
這いながら歩かせられたという。
もう一人は大雲さんという禅宗のお坊さん。
上官の命令に従わずに殴られる人だった。 戦後40年経って、鶴見さんは偶然、丹波篠山(兵庫県)に行く。

私にとっては、大雲さんという人は丹波篠山の人だということが頭の中にずっと入っていたのです。
そこで土地の人に「ここに大雲さんという坊さんがいますか」と尋ねるといるという。「逢いに行きますか」と言われたけれども、逢わずに帰ってきた。

  とにかくそういう人間がいるということはわかった。
それで嬉しいですね。
私はそういう人がいるということはとても大切なことだと思っています。