名古屋乗西寺外観

乗西寺 時報

2020年春 第69号
つなぐ

更新日/2020年4月22日

歴史的な出来事に遭遇

原因不明のウイルス感染性肺炎」の最初の症例が報告されたのが昨年の12月。

中国の湖北省武漢市でした。年明けて15日、日本で初めての感染者が確認された。2月に入ると横浜に寄港したクル-ズ船「ダイヤモンドプリンセス」の乗客乗務員3千7百人の感染拡大が日々伝えられました。

船内で感染を抑え込む政府の対応はなかなか難しいものがあり、欧米のメディアからは辛辣な批判がありました。当時は私自身も欧米の人々も少なくとも、まだ「対岸の火事」と見なしていました。

感染拡大の初期では医療関係者の多くは、お年寄りが重篤になる点を除けばあまり危険性を強調されませんでした。私もインフルエンザのちょっとひどいものと考え、「暖かくなればウイルスは奇跡のように消える」と言うトランプ大統領の言葉をう呑みにして油断したのです。

本格的な春を迎え、寺の境内の梅、桜はいつものように咲きました。4月に入っても新型コロナ禍は衰えを見せず、日々感染者数は増え続けています。ついに政府は緊急事態宣言を16日、全国に出し「不要不急の外出」の自粛を求め呼びかけました。

デパ-トや映画館や書店や飲食店や、普段よく行く場所がほとんど休業になってしまいました。家にいて何をしているか。唯一の贅沢は時間がたっぷりあることです。私はテレビ以外、小説などの本を読んでいます。

 思えば感染症について、私たちはこれまであまりに無知だったのではないか。それが社会にどれほど大きな影響をあたえたかを立川昭二氏は『病気の社会史』に次のように書かれています。

「古代のギリシャやローマを滅ぼした一因は疫病であった。中世末期ヨーロッパをおそったペストは近代を開く陣痛となり、発疹チフスはナポレオンをロシアから敗退させる一因となった。いかにすぐれた兵器も、国家・民族の運命に及ぼした影響力では、ときには発疹チフスを媒介するシラミ、ペストを伝播するノミよりも、弱いのではないか。ある文明はマラリア原虫のために衰退し、ある軍隊は極微のコレラ菌のために壊滅した。結核や梅毒がなかったら、近代文化はかなり色合いのちがったものとなっていたであろう。」「病気は文明がつくり、また社会が動かしていく」

新型コロナウイルスもグロ-バル化し情報化した現代社会と不可分な関係にあるわけです。だからこそ世界中にまん延していくのです。

関係し合い、生きているのに

この感染症の難しさは、人と人との接触を禁じざるを得ないということです。誰もが家にいて、外出しないよう努めているのですが、思っていた以上に私は人との何でもない会話とか、友人とともにいる時間に支えられてきたのだと痛感しています。これまでと生活が大きく変わっていないのに、この感覚はなんなのでしょう。日々営んできた暮らしは、多くのことが関係し合って、結びついて、複雑で絶妙なバランスの上に成り立っています。自宅に釘づけになりながら、コロナ禍という現実を身をもって体験し、考えています。どこまでこの状況が続くのかわかりませんが、コロナ禍の後を思い、何をどう変えていくのか、家族で話し合っています。

御文のことば

中世のヨ-ロッパで猛威をふるったのはハンセン病、そしてペストでした。日本で親鸞聖人、蓮如上人が生きた鎌倉・室町時代はどうだったのでしょうか。蓮如上人が書かれた御文4-9にこうあります。

「当時このごろ、ことのほかに疫癘とてひと死去す。ことさらに疫癘によりてはじめて死するにはあらず。うまれはじめしよりしてさだまれる定業なり。さのみふかくおどろくまじきことなり。しかれども、いまの時分あたりて死去するときは、さのみふかくおどろくまじきことなり。しかれども、今の時分にあたりて死去するときは、さもありぬべきようみなひとおもえり。これまことに道理ぞかし。」

4百年前の人々も、私たちと同じように疫病に罹りたくないし、死ぬとは思ってもみないことでした。それではどうするのか・・・

「かかる時はいよいよ阿弥陀仏をふかくたのみまいらせて、極楽に往生すべしとおもいとりて、一向一心に弥陀をとうときことと、うたがうこころつゆちりほどももつまじきことなり。」「かくのごとくこころえのうえは、ねてもさめても、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏ともうすは、かようにやすくたすけまします、御ありがたき、御うれしさをもうす御礼のこころなり」

いまだからこそ、仏さまへの御礼「仏恩報謝」の念仏を申しなさいといわれています。コロナ禍の現実を生きる私たちはどうしたらいいのか。毎日メディアは患者数と死者数をくり返し報道していますが、それを見て私たちは不安になってしまいます。でも、私がやるのは手を洗い、アルコ-ル消毒し、マスク着用を心がけることなのです。異常を日常にできるか。専門家の方も「リスクにはパニックにならず、冷静になるのが大切です」と。この冷静とはこころの問題が深くかかわっています。

寺の行事について

新型コロナウイルス感染症の拡大のため当分の間、寺での行事は休まさせていただきます。

「法話のつどい」「みんぐるまんぐる広場」「乗西寺カフェ」

以上の3つは休止となります。なお、お寺での法事・納骨堂へのお参りは家族や少人数の場合は受入れております。詳しくは寺へお尋ねください。

◯今後の予定

・お盆法要 8月9日(日) 午前10時半~

・お墓参り 8月12日(水)13日(木) 平和公園

・お彼岸法骨法要 9月22日(火) 午後1時半~

コロナ禍がどこまで続くかわかりませんが、収束することを願い皆さんとともにお参りできることを思い描いています。

【あとがき】

ご門徒の方からの手紙に今回のコロナ禍は「私が幼い頃体験した太平洋戦争末期の状況に似ています」と書かれていました。「ウイルスとの闘い」早く薬とワクチンができることを願っています。今後のことを思い、寺のホ-ムペ-ジをリニュ-アルしました。一度ご覧くだされば幸いです。(住職)  

護持会費のお願い

今年度も引き続き、お寺の護持のためご協力お援助お願いいたします。

《 振込先 》 ・十六銀行 池下支店 普通1027844 宗教法人乗西寺 護持会

・ゆうちょ銀行 12110-3 30064041宗教法人乗西寺

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